晩年のドーミエは、生活のために版画を続けながらも、油彩で個人的なテーマを描きます。ドン・キホーテは最も多く描かれた人物で、この作品は最初のものと見なされています。彼が連作に集中的に取り組み始めるのは、視力が衰えて生活も困窮し始めた頃で、サンチョ・パンサを従えて荒れ地や山中を行く、あるいは、羊の群れを敵と間違えて突進する場面などを、繰り返し熱心に描きました。連作の最後になると場面を特定できるものは何もなく、社会から孤立した二人の馬上の姿が、単純化された粗い筆遣いで描かれ、抽象的にさえ感じられます。孤独な理想主義者ドン・キホーテに、権力の腐敗や社会の欺瞞を告発し続けてきた自らを重ねていたのかも知れません。
当ウェブサイトの作品画像のお取り扱いにつきましては「サイトのご利用にあたって」をお読みいただき、ご同意いただきました上でご利用ください。
QRコードを携帯で読み取ると簡単にブリヂストン美術館の携帯サイトにアクセスできます。